サンキューセットふたたび
マクドナルドで今月9日から、平日のランチタイムに限り、チーズバーガー/ハンバーガーにドリンクとフライドポテトをセットにしたメニューが390円で販売されている(チーズバーガー/ハンバーガー以外のバーガー類のセットは490円)。
バブル崩壊以降、日本経済の乱高下を象徴するかのように、マクドナルドは1990年頃から商品価格を頻繁に変更しているが、これほど明確な値下げは久しぶりである。しかし私にとって印象深いのは、マクドナルドの株価でもなければ、売り上げでもない。この390円という価格そのものなのだ。
1987年、戦後緩やかに成長し続けてきた日本経済が、急激に膨張する、いわゆる平成バブルに突入する直前、マクドナルドは日本進出以来、初めての商品値下げを行った。それがサンキューセットと呼ばれる、ハンバーガーにフライドポテトとドリンクをセットにした、390円の商品である。この企画は現在のように、売り上げの低下を食い止めるためのものではなく、利益率を下げても、販売数を圧倒的に伸ばそうという、マクドナルドの経営方針の完全な転換だったと思う。
サンキューセットが発売される直前のマクドナルドは、私の記憶する限り、ハンバーガーが210円、ドリンクのSサイズが180円。これにフライドポテトを加えると、600円以上のランチとなる。決して安い食べ物ではなかったのだ。それに比べると、当時の吉野家の牛丼は一杯400円。ランチとしてはこちらの方が圧倒的にボリュームがある上に、はるかに安い。
ところがサンキューセットの登場によって、牛丼とハンバーガーの価格バランスが完全に崩壊してしまった。その後の日本の外食産業の混迷は知っての通り。吉野家は最終的に牛丼一杯290円にまで値下げした挙句に破綻した。吉野家だけではない。ラーメン屋、弁当屋、街の定食屋、そういう庶民の昼食を支えていた日本の外食産業が、すべてマクドナルドの価格戦略に歩調をあわせざるを得なくなってしまったのだ。
バブル経済が崩壊し、外食産業はどんどん整理統合され、20年かけてようやく安定した価格になってきた。日本人はもう20年も景気が悪いと言い続けているが、ここでちょっと振り返ってみて欲しい。マクドナルドがサンキューセットを発売する前の、日本の物価(外食に限らず)と、平均的な家庭の収入、これらを比較してみると、明らかに現在の方が、暮らしやすいことが分かるだろう。
バブル経済そのものがなかったと考えれば、日本人の生活は、この20年で随分裕福になったはずなのだ。










最近のコメント