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2008年5月19日 (月)

さよなら 110

2008051901フジフイルムが来年9月で 110 フィルムを販売終了するというので、日曜日にビックカメラで2本買ってきた。今日カメラに装填したが、まだ撮影はしていない。Super G というのは、35mm フィルムだといつ頃の商品だったか。最新のネガフィルムの技術で製造すれば、それなりに高感度で微粒子になるだろうが、110 はもう10数年前に進歩が止まってしまったようだ。

2008051902もっとも私は高級なポケットカメラを持っていないので、フィルムだけ良くなっても意味はない。今持っている唯一のポケットカメラが、PREMIER MINI 110 という、謎の台湾製カメラである。20年ほど前に、ダイエーでワゴンに山積みになっていたものを、4~5台まとめて買い、その後友人にあげてしまったので、手元に残っているのは写真の黒ボディと白ボディの2台だけである。レンズは単玉の固定焦点固定絞りで定速シャッター。ホットシューもなければ、フラッシュキューブのコネクタもない。

しかしネットで検索してみると、PREMIER は台湾の大手光学機器メーカで、今やサンヨーに迫るデジカメの OEM 生産台数らしい。どうりでオモチャの割には良く写るわけだ。実は10年以上前に、一度だけこのカメラで撮影したことがあるのだが、単玉特有の糸巻型の歪曲が大きい以外は、写ルンですに遜色のない写りだった。

20年前になぜこんなカメラを何台も買ってしまったかというと、私は 110 には特別な思い入れがあったからである。

コダックが 110 インスタマチックフィルムとポケットカメラを発売したのは1972年。小学校から中学に進級する頃だった私は、写真の面白さに目覚め、とにかく自分だけのカメラが欲しくてたまらなかった。しかし当時 35mm フィルム用の国産カメラはまだ高級品で、小学生の小遣いで簡単に買えるものではない。ちょうどその頃の子供向けのカメラが、同じコダックが1963年に発売した、126 フィルムを使うインスタマチックカメラであった。

中学に入ったらインスタマチックカメラを買おう、と密かに心に決めていた私の目の前に、突然現れたのが、126 の半分程度の大きさの 110 インスタマチックだったのである。ところが目標を 126 から 110 に変えて、いよいよ自分のカメラを買おうとしてカタログを集めまくっていたとき、私の目に留まったのが、同じポケットカメラのミノルタ16 であった。1万円以下のコダックのポケットカメラが、単玉固定焦点固定絞り単速シャッターだったのに対し、ミノルタ16 はそれ以下の値段で、3群3枚のレンズ、虹彩絞りのマニュアル露出、しかもシャッター2速でシンクロ接点付きが買えたのである。

110 フィルム向けにコダックが全く新しい高性能なカラーネガフィルムを開発したということを知らず、固定露出でまともな写真が撮れるわけがないと信じていた私は、予定を変更して 16mm フィルムを使う Minolta 16Ps というミノックススタイルのカメラを買ってしまった。

もちろんカメラの性能は単玉レンズのコダックよりミノルタのほうがいいに決まっているが、問題はフィルムの供給だった。コダックが自社のフィルムを売るためにカメラを作っているのと違い、カメラメーカのミノルタは、あくまでフィルムメーカ頼みである。16mm サイズの高性能なフィルムが提供されない限り、いくらカメラの性能が良くても、いい写真は撮れない。それどころか、世界中の主要なメーカが、ポケットカメラのフォーマットを 110 に移行してしまったので、ミノルタ 16 は購入して数年後には、フィルムの入手すら困難になってしまったのである。もっとも高校に進級すると、父親の Nikomat FTN を持ち出すことが多くなり、画質に圧倒的に差があるポケットカメラそのものから興味がなくなってしまったのも事実であるが。

というわけで、中学1年生の私が小遣いをためて買った Minolta 16Ps は、結局10本もフィルムを通すこともなく、引き出しの中から出てこなくなってしまったのだ。もしあの時、コダックのフィルム販売力を理解して、110 カメラを買っておけば、いくらなんでももう少し多くの写真をポケットカメラで撮ることになっただろうと思うと、どうしても 110 カメラへの思いが断ち切れない。10数年後のそんなある日、ダイエーでたたき売りされていたカメラが、この PREMIER なのである。もちろんこのときはもう 110 の時代は終わっていたために、1台数百円で売られているカメラですら、誰も見向きもしなかったので、これはまさに、私のために売られているのだという気持ちで、何台も買ってしまったのだ。

それからさらに20年、その後コダックはディスクフィルム、APS フィルムと、次々に新しいフォーマットを開発して行ったが、ディスクは消え、APS は風前の灯。そして今度こそ、本当に 110 フィルムとの、いやインスタマチックとのお別れである。

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