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2008年3月 7日 (金)

ソメイヨシノ以外

2008030701安城産業文化公園デンパークのオカメザクラ。イギリスの桜愛好家により作られた、カンヒザクラとマメザクラの交配種であり、3月下旬に咲く早咲きの桜の一種。ここは温室内なので、すでに満開である。

2008030702一般に4月の花見で咲き乱れるソメイヨシノは、江戸時代の植木職人によって作られた1本の桜の株分けによって繁殖させられた、クローン植物である。したがって同じ温度環境の下では、ほぼ同時に開花するため、他の植物と違って、地域全体で一斉に満開になるのだ。

したがってもしソメイヨシノの固体に抵抗力のないウィルスが発生したり、地球環境変化によってソメイヨシノの固体に不利な条件が発生すると、あっという間に全滅する危険性がある。ひとつの種の生物が何千年、何万年も繁殖し続けられるのは、固体ごとに遺伝子に多様性があるからで、たとえば中世のヨーロッパでコレラやチフスが大流行したときも、ある地域で人間が全滅することはなかったのだ。しかしクローン生物の場合、ある固体が感染し発病する病気は、必ず別のクローン固体でも発病する。

ところで、クローンの危険性というのは、生物に限った話ではない。機械や道具でも同じことが言えるのだ。たとえば、全く同じ自動車を、全く同じように運転しても、ある固体は10年間故障もせずに動き続けるが、別の固体は1年で故障してしまうことがある。もちろんこれは、機械部品がひとつずつ「モノとしての多様性を持っている」からである。

しかしソフトウェアに関してはこれが当てはまらない。あなたの使っている Microsoft Windows と、私の使っている Microsoft Windows は、全く同じものなのである。私の Windows がある特定のウィルスによって致命的な打撃を受けたとすれば、それは必ずあなたの Windows にも致命的な打撃を与える。

だからいろんな OS が必要なのだ、とは言わない。もし複数の、まったく仕様の異なる OS が、均等に普及したりしたら、コンピュータなど使い物にならないからだ。かつての VHS とベータ、数日前に決着した Blu-ray と HD-DVD、規格が統一されなければ、アプリケーションは絶対に普及しない。しかしビデオや DVD の場合は、規格がひとつであっても、ハードウェアは固体ごとに多様性があるから、ある日すべての Blu-ray レコーダが使用不能になることはない。ところがソフトウェアの場合、規格がすなわち固体の仕様であり、すべての固体がクローンなのだ。

理想は Windows と API 互換の、まったく内部構造の異なる、複数の OS が、多数のメーカから発売されることなのだが、これは OS の価格をとんでもなく高くすることになり、やはり普及しないだろう。第一かつて ANSI が POSIX という API 規格を試みたではないか。結局それは最終的に、ほとんどの UNIX を死滅させ、Linux という単一カーネルのクローンを生み出したに過ぎない。

Windows の普及によって、コンピュータメーカは OS の開発費が不要になり、驚異的にコンピュータの価格を下げたが、我々は誰でも買える安くて高性能なコンピュータを得た変わりに、ある日すべてのコンピュータが壊滅的な被害を受ける危険性を甘んじて受け入れなければならない。

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