ソニーのリニア PCM レコーダの最新型である。正式発売前に、偶然名古屋のビックカメラでモックアップを見てしまい、それ以来気になって仕方なかったのだ。実際に製品が発売されてみると、ものすごい売れ行きのようで、私がよく利用する通販ショップでは、発売後数日で在庫切れ。これはしばらく手に入らないかも、と思っていたら再入荷して再び受注開始。ところがそれもまた数日後には在庫僅少になってしまっていると言う具合なので、2度目の在庫切れになる前に注文してしまった。
PCM レコーダ、なんと甘美な響き。1977年にソニーが世界初の民生用 PCM プロセッサ、SONY PCM-1(\480,000)を発売して以来、オーディオ小僧にとっては、羨望の的だったのだ。1990年代になると DAT が発売され、10万円程度で誰でも PCM レコーダが手に入るようになるのだが、その半分以下の値段で、より手軽にデジタル録音できる MD の登場で、DAT は一部のマニアの間にしか普及しなかった。そしてその DAT を自ら葬ったのが、ソニーの IC レコーダ PCM-D1 である。
しかし PCM-D1 は、あくまでプロ用のデジタル録音機材。値段も20万円以上するし、キヤノンコネクタのマイクアンプが用意されていることからも、スタジオやロケでの利用を想定したものだろう。その数年後、5万円程度で買える PCM-D50 が発売されたのだが、これでもまだ大きく重く、電池寿命が満足できるものではなかった。
そして今回の PCM-M10 である。メモリーカードはついに microSD を採用し(M2 と排他利用)、リニア PCM だけでなく、MP3 による長時間録音も可能にし、単3電池2本で40時間以上駆動する。
リニア PCM レコーダといえば、現在サンヨー、オリンパス、ソニー3強の寡占市場であり、そこにローランドやコルグなどの楽器メーカが加わるという状況である。楽器メーカの PCM レコーダは、性能は申し分ないらしいが、これはプロやハイアマチュアのミュージシャンが、スタジオ録音を行うための道具としての色合いが強く、またサンヨーやオリンパスの製品は、その形状からして、明らかに会議メモ録音用の IC レコーダの派生品である。
ところがソニーの PCM レコーダは、それらのどれとも違う、「テープレコーダ」の延長上にあるのだ。たとえばボタン配列。これこそまさにテープレコーダである。十字キーなどは使わず、録音ボタンとポーズボタン、再生ボタンと停止ボタンをそれぞれ独立させ、ソニーのテープレコーダの伝統に沿って1列(スペースの都合上千鳥配列だが)に並んでいる。またディスプレイの中で最大の面積を占めるのがレベルメータ。もちろん上下2段で上が L チャンネル、下が R チャンネルだ。本体上部にはレベルメータとは独立した、LED のピークインジケータがある。そして極めつけは、ダイアル式の録音レベルボリュウム。これが +/- ボタンだったりしたら、絶対に私は買わなかっただろう。さらに内蔵マイク録音だけでなく、外部マイクはもちろん、ライン入力端子を備え、AC アダプタを同梱することで、据え置き型のカセットデッキを代替することまで想定しているのだ。
やはりこういう「アマチュア向けの本格的な機材」を作らせたらソニーはうまい。久しぶりにソニーらしい民生品である。アップルの真似などしていないで、ソニーはこういう市場を、もっと積極的に開拓してもらいたいものだ。
肝心の音質に関しては、これからおいおいレポートする予定であるが、とりあえず初期設定のまま、ベランダでカラスや小鳥の鳴き声、車の騒音、そういったものを無造作に録ってみると、手軽な内蔵マイクとはいえ、もはやこれはテープレコーダとは異次元の、超高忠実度の音声記録装置であると言える。
ソニーのデジタルレコーディング技術の歴史については、Sony History を参照されたし。
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